【働き方改革】正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差の禁止(同一労働同一賃金)(大企業2020年4月、中小企業:2021年4月)

2019年01月06日

働き方改革

 働き方改革では、(1)時間外労働の時間規制(https://www.sn-tax.jp/2557/)、(2)年5日の年次有給休暇の時季指定義務(https://www.sn-tax.jp/2560/)、(3)正規雇用労働者と非正規雇用労働者の正規雇用労働者の間の不合理な待遇差の禁止(同一労働同一賃金)の3つから構成されています。

 同一労働同一賃金は、同一企業内において正規雇用労働者と非正規雇用労働者(パートタイム労働者、有期雇用労働者、派遣労働者)の間で、基本給や賞与などの個々の待遇ごとに不合理な待遇差が禁止されるもので、大企業は2020年4月1日から、中小企業は2021年4月1日から適用されます。

 同一労働同一賃金については、2018年6月1日最高裁判決の長澤運輸事件とハマキョウレックス事件が参考になります。

長澤運輸事件では何が違法とされたのでしょうか。
 長澤運輸事件では、定年退職した後に嘱託社員となった労働者が、賃金の引下げ、正社員との賃金手当の格差について争いをしたものです。
 主な争点は、次の2点です。
(1)定年退職した後に有期労働契約を締結した者(定年後嘱託社員)が、無期雇用労働者とほぼ同一の勤務を行っているにもかかわらず、賃金等の労働条件に相違があることは、労働契約法第20条に違反するのか
(2)定年後嘱託社員には、精勤手当、住宅手当、家族手当、役付手当、賞与、退職金が支給されないこと(賃金の相違)は、労働契約法第20条に違反するか
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労働契約法第20条(期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止)
 有期労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件が、期間の定めがあることにより同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件と相違する場合においては、当該労働条件の相違は、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない。
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(1)については、定年退職後の継続雇用において職務内容やその範囲の変更等が変わらないまま相当程度賃金を引き下げることは広く行われており、正社員との賃金の差額を縮める努力をしたこと等からすれば、年収2割程度の減額は当事者である会社の規模や業界に照らして、不合理とまではいえないとし、合法と判断しました。 

(2)については、賃金項目の趣旨を個別に考慮すべきものと解するのが相当であるとし、精勤手当を支給しないことは違法、それ以外の住宅手当、家族手当、役付手当、賞与、退職金を支給しないことは合法と判断しました。

ハマキョウレックス事件では何が違法とされたのでしょうか。
 ハマキョウレックス事件では、有期雇用契約を締結している契約社員が正社員との間の賃金手当の格差は、労働契約法第20条に違反するものとして争ったものです。

【争点】
 契約社員には、正社員と異なり、無事故手当、作業手当、給食手当、住宅手当、皆勤手当、家族手当、賞与、退職金は支給されないことは労働契約法第20条に違法するのではないか

【判決】 
 無事故手当、作業手当、給食手当、皆勤手当については、契約社員と正社員との間で格差を設けることは違法であるとし、さらに、通勤手当は正社員の下限の金額が契約社員の上限の金額を上回っていることは違法であるとしました。

同一労働同一賃金に対応するにあたり、何を行わなければならないでしょうか。
 パート労働者、短時間労働者、派遣労働者について、(1)基本給、(2)賞与、(3)手当、(4)福利厚生について正社員と差異を設けている場合、それが合理的であるか検討する必要があります。
 
 具体的には、厚生労働省から公表されている「同一労働同一賃金ガイドライン」に照らし合わせて判断します。