【合同会社】定款の記載ミスで会社が強制解散(相続、合併の場合の特則の記載もれ)

2022年09月06日

改正情報・相談事例

 通常、定款作成の際、税理士が関与する部分としては「資本金をいくらにするか」「役員・株主の構成をどうするか」「決算月をどうするか」などのアウトラインになり、定款の記載内容を隅々まではチェックをしません。定款を作成する司法書士の責任の範疇だと考えています。

 今回ご紹介するのは「合同会社」に限定した話しですが、定款の記載もれにより会社が強制解散させられてしまうケースです。

 例えば、父が社員(発起人)となり、1人合同会社を設立した後、父が死亡した場合、その父の出資持分を相続人が相続し、合同会社を承継して、事業継続していくことを想定していると思います。ところが、このような社員が1人となった合同会社において、定款の記載の仕方次第では、父が死亡した時点で合同会社は強制的に解散させられることになり、事業継続はできないだけでなく、合同会社が所有している財産(不動産などの固定資産)は原則として換価(現金化)され、債権者に返済した後、残余財産が相続人に払い戻されることになります。

 これは、会社法第607条(法定退社)の規定によるものであり、「株式会社」には存在しない規定のため、見落としている司法書士もいるようです。

会社法第607条の規定を教えて下さい。
会社法第607条には(法定退社)が規定されており、第3号によって社員が「死亡」した場合、その社員は「退社」することとされています。そして、会社法第641条第4号において「社員が欠けたこと」に該当するときは合同会社は「解散」するとされています。
 つまり、社員1名の合同会社で、その社員が死亡したときは、社員ゼロ=「社員が欠けたこと」となり、会社は強制解散となります。
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第607条 社員は、前条、第609条第1項、第642条第2項及び第845条の場合のほか、次に掲げる事由によって退社する。
一 定款で定めた事由の発生
二 総社員の同意
三 死亡
四 合併(合併により当該法人である社員が消滅する場合に限る。)
五 破産手続開始の決定
六 解散(前2号に掲げる事由によるものを除く。)
七 後見開始の審判を受けたこと。
八 除名
2 持分会社は、その社員が前項第5号から第7号までに掲げる事由の全部又は一部によっては退社しない旨を定めることができる。
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合同会社が会社法607条、第641条第4号により解散させられないようにするためにはどのような方法がありますか?
 定款に会社法608条(相続及び合併の場合の特則)の規定を記載することで解散を回避することができます。
具体的には、定款に下記の条項を追加修正します。この規定があることにより、例えば、父1人が社員となっている合同会社でその父が死亡した場合でも、父の持分を相続人が承継し、合同会社の事業を承継することができます。

『(法定退社及び相続、合併の場合の特則)
第●条 各社員は、会社法第607条の規定により、退社する。
2 前項の規定にかかわらず、社員が死亡した場合又は合併により消滅した場合においては、当該社員の相続人その他一般承継人が当該社員の持分を承継する。』
 
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第608条 持分会社は、その社員が死亡した場合又は合併により消滅した場合における当該社員の相続人その他の一般承継人が当該社員の持分を承継する旨を定款で定めることができる。
(以下、省略)
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すでに合同会社で経営していますが、解散させられないように何をすべきでしょうか?
 現在の定款を見ていただき、「相続、合併の場合の特則」の規定が定められていなければ、総社員の同意により定款の変更を行い、この特則の規定を追加する必要があります。