【働き方改革】就業規則の変更-5日以上の有給休暇義務

2019年07月08日

働き方改革

 2019年4月から「働き方改革」が施行され、使用者は法定の年次有給休暇付与日数が10日以上のすべての労働者に対して、年5日の年次有給休暇を確実に取得させる必要があります。

 今、この有給休暇義務にどのように対応するかの相談が増えています。今回の年次有給休暇の義務の対象者は、正社員、パートにかかわらず年次有給休暇の付与日数が10日以上の労働者となるため、まずは各労働者のうち年次有給休暇の付与日数が10日以上の者をリストアップし、その者の過去の有給休暇の取得状況を調べ、年5日以上取得できていない労働者がいれば対応が必要となります。

 次に年5以上取得できていない労働者がいる場合は、使用者は時季を指定して労働者に有給休暇を取得するようにしなければなりません。使用者は、この対応方法として次の2つの選択肢があります。
①各労働者ごとに年5日の有給休暇を取得する時季を指定し、有給休暇を取得させる
②計画年休を導入する

 また、上記①又は②に対応するよう「就業規則」を変更しなければなりません。

各労働者ごとに年5日の有給休暇を取得する時季を指定し、有給休暇を取得させる場合、就業規則はどのように変更すればいいですか。
 平成31年3月改正の厚生労働省のモデル就業規則の第22条(年次有給休暇)が変更されました。この中の第5項が該当箇所になります。

「第22条
1項~4項 (略)
5 第1項又は第2項の年次有給休暇が10日以上与えられた労働者に対しては、付与日から1年以内に、当該労働者の有する年次有給休暇日数のうち5日について、会社が労働者の意見を聴取し、その意見を尊重した上で、あらかじめ時季を指定して取得させる。」

 この個人別に指定する方法の問題点は、次のとおりです。
①有給休暇の付与日が個々の労働者で異なる(入社日から起算している)場合、付与してから1年以内に最低5日の有給休暇を取得しているかどうか絶えずチェックをしなければならない
②付与してから、例えば10ヵ月や11ヵ月が経過してから5日の有給休暇を指定する場合、残り数ヵ月で有給休暇を取得させなければならず業務に支障をきたすおそれがある
③上記①②の管理が煩雑である

 したがって、実務上はこの機会に「計画年休」の導入を検討する会社が多いです。

働き方改革に対応するために「計画年休」を導入する方法を教えて下さい。
 計画年休を導入すると、使用者は、労働者への有給休暇の付与日数から5日を除いた残りの日数を計画的付与の対象にすることができます。計画的付与の対象となった日数は、企業全体の休暇にしたり、グループ別や個人別に有給休暇を指定したりすることができます。

 計画年休を導入すると、年始や4月1日など基準日に年間カレンダーを作成し、5日の計画的付与日を指定することで「働き方改革」にも対応できます。

 計画年休を導入するには、就業規則の変更と労使協定の締結が必要です。この労使協定は労働基準監督署に届け出る必要はありません。

「第22条(年次有給休暇)
(前略)
・前項の規定にかかわらず、労働者代表との書面による協定により、各労働者の有する年次有給日数のうち5日を超える部分について、あらかじめ時季を指定して取得させることがある。」

 また、どの企業でも年末年始、GWなどのいわゆる「特別休暇」があると思います。特別休暇を取得した日数分については、5日の有給休暇取得にカウントできません。この特別休暇について、今回の改正を契機に廃止し、年次有給休暇に振り替えることは労働者にとって不利益変更に該当するため、労働者との個別合意を得ながら慎重に導入する必要があります。