【労働基準法】振替休日を取得した時の給与計算

2019年04月19日

労務相談事例

 従業員の休日出勤をさせ、代わりに労働日を休日として休ませることがあります。休日に働いた日数分は本来の労働日を休みとすし、プラスマイナスゼロの感じがしますが、「振替休日」なのか「代休」なのかで相違する部分が生じます。

 休日出勤の割増賃金が支給されるかということで、「振替休日」か「代休」かという論点の相談を受けることはたまにあります。

 しかし、今回の相談は、振替休日を取得した日が休日出勤した月を跨いでしまい、従業員から「休日出勤した月は1日分多く賃金が支払われるべきであり、振替休日を取得した月は1日分賃金から控除されるべきではないか」と指摘を受け、これに対してどのような対応するかというものです。振替休日はどの会社でも使用しているでしょうし、休日出勤しても他の労働日が休日となるため、月を跨いだとしてもプラスマイナスゼロなのでその従業員が指摘するような賃金計算をしている中小企業は皆無に近いのではないでしょうか。

「振替休日」と「代休」の違いを教えて下さい。
 「振替休日」は、あらかじめ所定の休日を他の勤務日と入れ替えることをいいます。振替休日を行った場合、本来の「休日」に社員を出勤させたとしてもその休日出勤は「勤務日に出勤した」ものとして休日出勤には該当しません。

 「代休」は、休日出勤させる代わりに他の勤務日の勤務を免除するものです。休日出勤は「休日に出勤した」ものとして取り扱われ、代わりに休みを与えた日は「勤務日に休んだ」ものとして取り扱われます。

 振替休日か代休かの判断ポイントは、「あらかじめ」代わりの休日を指定しているかどうかです。

 振替休日として振り替えるべき日は、振り替えて労働した日以降できる限り近接している日が望ましいですが、期限について特に法令上制限されていないため、1ヵ月以内など社内ルールを設けて指定していくことになります。

「振替休日」について、例えば4月21日(休日)を労働日とし、それよりも前である4月9日(労働日)を休日として振り替えることはできませんか。
 振替休日は、一般的には本来は休日である日に労働させ、その後に、本来の労働日を休日とするというように、振り替える日は労働した日よりも後になることが多いです。しかし、ご質問のように、休日労働する日よりも前の日のうち、本来の労働日を休日として振り替えることも認められています。
「振替休日」と「代休」による割増賃金の計算の注意点を教えて下さい。
 賃金を支払う会社からすれば「代休」よりも「振替休日」の方が有利になります。
 振替休日により休日に労働した日は、「休日出勤」には該当しないため、休日労働の135%の割増賃金を支払う必要はありません。代休の場合は、休日に労働した日は「休日労働」に該当するため、休日労働の135%の割増賃金の支払が必要です。

 なお、振替休日により労働した時間が週40時間を超える場合は、その超えた時間に対しては時間外労働の割増賃金の支払が必要となります。

振替休日で休日労働した日と振り替えて休日として指定した日が給与計算月を跨ぐ場合、どのように給与計算するのでしょうか。
 たとえば、
 ●給与計算締日:月末
 ●給与支給日:翌月10日
 ●4月21日(休日)に労働させ、振替休日が5月8日(労働日)
の場合、ほとんどの会社では、4月分給料では4月21日に労働した日を賃金に加算し、5月分給料では5月8日に休日した分を賃金から控除することはしていないのではないでしょうか。振替休日の場合、労働した日と振り替えて休日となった日があり、プラスマイナスゼロであるためです。

 しかし、正しい給与計算は、4月分給料では1日分(週40時間を超える場合は、時間外労働の割増賃金0.25を加算)を支給し、5月分給料では1日分を控除します。

 このような給与計算は非常に煩雑であるため、実務上は、時間外労働の割増賃金部分を支給し、1日分を加算、控除しない会社も非常に多いです。