【相続税】資産管理法人を活用した退職金・弔慰金の非課税による節税対策

2015年04月09日

税法相談事例

 相続税の節税対策として「生命保険金の非課税枠」を活用している方は非常に多いです。被相続人が亡くなった際に受け取る死亡保険金について、500万円×法定相続人の数が非課税となり、相続税がかかりません。

 たとえば、相続人が配偶者、子供2人の場合、500万円×3人=1,500万円には相続税がかかりません。

 手元の預金に1,500万円あるのでしたらそのまま預金で残していると預金1,500万円に対して相続税がかかります。でもこの預金を一時払い終身保険として払い込めば、死亡時に受け取る死亡保険金1,500万円には相続税はまったくかかりません。

 現金があるのであれば保険に入れば節税になるということで、相続税対策として一時払い終身保険に入る方が爆発的に増えています。

 ただ、一時払い終身保険に既に入っている方でまだ相続税の節税をしたいと考える方は、どうすればいいのでしょうか。

 今回の相談は、生命保険の非課税枠は使い切ってしまった方で、さらに相続税の節税を希望される方です。
 相談者には不動産所得(家賃収入)があります。

生命保険金の非課税枠以外にどのような節税対策が効果的でしょうか
不動産管理会社を設立することで(1)所得税の節税対策、(2)退職金の非課税枠を活用した相続税の節税対策が可能となります。

 個人所有の不動産の管理業務を新たに設立する不動産管理会社に業務委託し、管理費を個人から不動産管理会社に支払います。管理料料率は判例も積み重ねられており、5%~10%の間が妥当です。家賃収入が年間3,000万円の場合、管理費は最大で300万円です。個人の不動産所得で300万円を経費に計上できるため、所得税・住民税が節税できます。

 被相続人は不動産管理法人の役員にしておき、被相続人が亡くなった後、遺族に退職金を支払います。被相続人に支給されるべきであった退職手当金等を受け取る場合で、被相続人の死亡後3年以内に支給が確定したものは、相続財産とみなされて相続税の課税対象となります。 

 ただし、退職金は死亡保険金と同様に相続税の非課税枠が定められており。500万円×法定相続人の数で計算した金額までは相続税がかかりません。たとえば相続人が配偶者、子供2人の場合には、退職金の非課税額は、500万円×3人=1,500万円です。

 さきほどの例で個人は法人に年間管理料300万円を支払うため、個人の相続財産を減らす効果があります。法人は受け取った300万円が収入になり、役員報酬として300万円を支払って経費を計上するのも一つですが、個人に入る家賃収入で生活はできるため、会社に入ってくる300万円は退職金の原資の積立てとして全額経費となるセーフティー共済か生命保険で法人税の節税をしながら、外部財産としてプールします。

 仮にこれを5年間継続して被相続人が亡くなった場合、被相続人の預金は1,500万円減り、法人は生命保険等を解約し、遺族に死亡退職金を支払います。死亡退職金が1,500万円の場合、相続税の退職金の非課税枠が1,500万円あるため死亡退職金には相続税がかかりません。つまり、生命保険金と同様に、被相続人の相続財産の一部を非課税とする効果があります。

 また、被相続人の死亡時に死亡退職金とは別に遺族に弔慰金を支払うことができます。この弔慰金は(1)被相続人の死亡が業務上の死亡であるときは被相続人の死亡当時の普通給与の3年分相当額、(2)被相続人の死亡が業務上の死亡でないときは被相続人の死亡当時の普通給与の6ヵ月相当額までは受け取った遺族側で相続財産とはみなされず、相続税が非課税とされています。

 このように管理法人を持つことで、死亡退職金と弔慰金の2つの相続税の非課税制度を活用することができます。

 なお、管理法人が支払う死亡退職金について、不相当に高額な部分は法人の経費にできないため、役員退職金規程や支給決定の議事録を作成する必要があります。