遺留分・代償金対策と相続時精算課税の活用

2014年11月06日

税法相談事例

被相続人(父)の財産が自宅不動産8,000万円、預金6,000万円、相続人は母、長男、長女の3人です。
母は預金2,000万円を持っています。

母と長男は父と自宅で同居しており、自宅不動産を取得することを希望し、長女は預金を相続することを希望しています。母は財産を相続しません。

長女は、長男が8,000万円の財産を取得するので、母の預金2,000万円をもらうことを主張し、母の介護などで母の預金を長男が消費してしまうことを心配されており、父の遺産分割協議書に押印する際、母の預金の問題も解決したいという相談です。

相続税対策として父の遺産分割協議において母の預金について協議することはできませんか。できない場合、母の相続をむかえる前に何か対策はないでしょうか。
遺産分割協議は、亡くなったお父様の財産に対して協議するものであり、相続人であるお母様の財産について協議することはできません。そうなると、長女からするとお母様の預金が確実に取得できるか分からないということで、遺産分割協議が難航することが予想されます。通常、相続する財産のバランスがとれないときは代償金で解決しますが、今回は代償金以外での対策を検討します。
 対策案としては、お母様が遺言書を作成し、預金はすべて長女が取得する旨を定めることで長女に納得してもらうことが1つです。ただ、これでは預金が介護などで消費され、将来どの程度残っているか問題があります。
 次の対策案は、遺産分割協議と同時にお母様から長女に預金2,000万円を生前贈与する方法です。これであれば預金が消費される心配もなく、遺産分割協議にスムーズにいくでしょう。生前贈与に対する贈与税の負担は、相続時精算課税制度を活用すれば2,500万円特別控除が使えますので、贈与税はかかりません。
 なお、遺言書で対応する場合も生前贈与で対応する場合も、お母様の相続の際の長男の遺留分を侵害してしまっていることは回避できません。遺留分の生前放棄は基本的には認められておらず、遺留分相当の財産の贈与を受けたため遺留分を放棄するなど一定の理由に該当しなければ放棄できません。