税金の納付が困難な場合、税務署が財産を差し押さえ、滞納処分を行って財産を換価し、滞納税金に充当することがあります。しかし、営業上の重要な財産が換価されてしまうと事業継続が困難になります。そこで、従来は、税務署に分割納付のお願いをし、換価を猶予してもらっていました。税務署の「職権による換価猶予制度」といい、滞納処分を猶予するかどうかの決定権は税務署にあり、猶予されなかった場合に納税者は不服の申立てができませんでした。

 平成26年度の税制改正で、国税徴収法が改正され、納税者の「申請による換価猶予制度」が創設されました。この制度は、従来と異なり納税者から換価猶予の申請を行うことができ、税務署が許可しなかった場合に納税者は不服の申立てができます。

 今回、消費税の納付を一時に行うことが困難な会社で、申請による換価猶予制度を使いました。平成27年4月1日以後に納期限となるものから初めて適用できる制度ですので、税務署の担当者も先例がなく、戸惑っていました。

申請による換価猶予制度について教えて下さい。
(1)制度の概要
 国税をその納期限までに納付していない場合には、納付するまでの日数に応じて延滞税がかかるほか、督促状の送付を受けてもなお納付されない場合には、財産の差押えなどの滞納処分を受けることがあります。
 ただし、国税を一時に納付することが困難な理由がある場合には、税務署に申請することにより、財産の換価(売却)や差押えなどが猶予される制度です。
 分納と違い、換価猶予の許可がおりると延滞税が軽減されます。

(2)換価猶予が認められた場合
(イ)既に差押えを受けている財産の換価(売却)が猶予されます
(ロ)差押えにより事業の継続又は生活の維持を困難にするおそれがある財産については、差押えが猶予されます
(ハ)換価の猶予が認められた期間中の延滞税の一部が免除されます

(3)換価猶予の適用対象
 主な適用要件は次のとおりです。
(イ)平成27年4月1日以後に納期限が到来する国税であること
(ロ)納税について誠実な意思を有すると認められること
(ハ)換価の猶予を受けようとする国税以外の国税の滞納がないこと
(ニ)納付すべき国税の納期限から6ヵ月以内に「換価の猶予申請書」が所轄の税務署に提出されていること
(ホ)原則として、猶予を受けようとする金額に相当する担保の提供があること

(4)換価猶予期間
 換価の猶予期間は原則として1年以内です。ただし、猶予期間中に完納できないことにつきやむを得ない理由がある場合は、当初の猶予期間を合わせて2年以内まで延長することもできます。なお、換価の猶予の適用を受けた国税は、原則として猶予期間中の各月に分割して納付します。

換価の猶予申請の注意点を教えて下さい。
(1)換価の猶予申請書の提出期限
 納付すべき国税の納期限から6ヵ月以内に申請書を提出しなければなりません。

(2)担保の提供
 猶予を受ける期間が3ヵ月以内または滞納国税が100万円以下であれば担保提供は不要です。ただし、担保を提供することができない特別の事情(担保財産がない場合など)がある場合は担保提供が免除されます。
 今回の事例でも、代表者の自宅が持ち家かどうか聞かれました。住宅ローンの抵当権が設定されていても担保として取るとのことでしたが、代表者の自宅は借家だったため担保提供は免除されました。保証人も必要ありませんでした。

(3)分割納付
 毎月納付することが原則とされていますが、今回の事例では、1年間で3分割での納付が認められました。

換価猶予が許可された場合、延滞税はどのような取扱いになりますか。
 平成27年では、納期限の翌日から2月を経過する日までの期間については「年2.8%」、それ以降は「年9.1%」です。
 換価猶予の許可がおりると2月を経過後の期間は特例基準割合「年1.8%」に軽減されます。
 換価猶予は申請書を作成し、提出する必要がありますが、このように延滞税が相当軽減される効果があります。税務署に単に分割で納付するお願いをしても延滞税の軽減は受けることができないため、できる限り換価猶予制度を活用しましょう。