【譲渡所得税】限定承認した場合のみなし譲渡所得税の申告

2015年02月13日

税法相談事例

 被相続人の財産よりも債務の方が多いと見込まれる場合、相続を単純承認してしまうと財産よりも多い債務を承継しなければならない可能性があります。相続財産で弁済できない部分は相続人の個人財産で弁済しなければなりません。

 このように相続財産よりも債務の方が多いと見込まれる場合の対応策として「限定承認」という方法があります。限定承認は、相続開始後3ヵ月以内に相続人の全員で家庭裁判所に申請する必要があります。限定承認をすることで、相続財産よりも債務の方が多くなっても、相続財産の範囲内でのみ弁済すればよく、それを超えて相続人の個人財産で弁済することはありません。

 今回の相談も限定承認に関係するものです。
 数十年前に離婚し音信不通となっていた父親が亡くなり、その知らせを聞いた相続人である子が限定承認をされました。父親の債務や個人保証していたものが不明であるからです。

 限定承認をすると難しいのが被相続人の準確定申告です。限定承認をすると被相続人が相続人に対して財産を時価で譲渡したものとみなして、譲渡所得税がかかります。不動産、有価証券など実際には譲渡していませんが、死亡日に時価で譲渡したものとみなします。なぜみなし譲渡として譲渡所得税を被相続人に課税するのかというと、税金も被相続人の債務として相続財産の範囲内でのみ納税すれば済むようにするためです。

限定承認した場合にみなし譲渡所得税が課税されるとのことですが、時価の算定など注意点を教えて下さい。
被相続人の準確定申告で譲渡所得税の申告を行います。
この場合の時価は、不動産であれば相続税評価額で申告することはできず、不動産鑑定士に鑑定評価を依頼するか、不動産業者に売却査定をとり、その金額で申告します。有価証券は死亡日時点の最終価格を時価とします。
 準確定申告の申告・納税期限は、亡くなった日の翌日から4ヵ月以内です。家庭裁判所に限定承認の申請を行い、債権者への公告が未了であっても、申告期限までに譲渡所得の申告をしなければなりません。
 自宅の不動産については、居住用財産の3,000万円特別控除の特例制度がありますが、限定承認の場合には相続人に譲渡したものとみなすため、親族間売買に該当し、この特例の適用を受けることはできません。