【社会保険】飲食店業を法人で行っている方の社会保険の強制加入対策

2015年05月20日

労務相談事例

 社会保険未加入の企業に対する年金事務所の調査が非常に増えています。

 健康保険料と厚生年金保険料は、従業員の年収に対して、おおよそ会社でその年収の15%を負担し、本人も15%を負担します。年収400万円の従業員であれば、会社負担が年間60万円、本人負担も60万円です。従業員が20人の会社であれば、会社負担は年間でなんと1,200万円になります。

 20人程度の中小企業であれば1,200万円のコストを負担すると会社は赤字転落し、資金繰りが悪化するでしょう。

 社会保険が未加入にもかかわらず給料から天引きしている悪質な企業は当然に罰せられるべきですが、社会保険に未加入の中小企業に「法律で強制されているから」「最大2年間さかのぼって徴収するぞ」という態度で接してくる年金事務所の担当者も問題だと思います。

 今回相談を受けた企業は飲食店を1店舗経営している会社で、社長家族とアルバイト数名で運営して、個人事業に近い経営状況です。アルバイトの数名も月150時間ぐらい働いていて、社会保険の加入対象になります。

法人の場合は社会保険の加入が強制されると調査官が言っていましたが、現状で社会保険に加入すると会社負担だけで年間200万円ぐらいになり、赤字になるどころか資金繰りが厳しくなります。何か対策はないでしょうか。
1つは、アルバイトの労働時間をおおむね週30時間、月120時間以内に減らすことができれば、社会保険の加入対象から外れます。しかし、このくらい労働するアルバイトは、実はものすごく戦力になる方であって、労働時間を減らすと業務に支障をきたすことが多いでしょう。

 2つ目は、法人で経営している飲食店業を個人事業主として経営することです。個人事業主から法人にいわゆる「法人成り」するケースがありますが、その逆の流れです。

 法人であれば役員1人だけであっても社会保険は強制加入させられますが、個人事業主は違います。
まず、従業員が5人未満であれば全ての業種で社会保険は加入する必要ありません。また、従業員が5人以上であっても『法定16業種』に該当しなければ社会保険は加入する必要ありません。従業員が100人になっても法定16業種以外であれば未加入で大丈夫です。

 法定16業種とは、製造業・土木建築業・鉱業・電気ガス事業・運送業・貨物積みおろし業・清掃業・物品販売業・金融保険業・保管賃貸業・媒介周旋業・集金案内広告業・教育研究調査業・医療業・通信報道業・社会福祉事業及び更生保護事業です。

 飲食店は法定16業種に該当しないため、従業員数に関係なく、個人事業主で経営すれば社会保険に加入する必要はありません。

 法人は休眠の手続きをしておけば、今後再開したいときに使うことができます。個人事業主に戻すことで、消費税の納税も基本的に2年間免除されます。社会保険対策だけでなく、消費税の節税にもなります。