【人事労務】解雇を言い渡す前の退職勧奨

2015年08月31日

労務相談事例

 会社が労働者を解雇することは「社会的合理性があるか」など非常に厳しく制限されています。使用者の解雇権を無制限に認めると労働者の地位が危うくなるということでしょう。

 しかし、問題行動を起こす従業員をそのまま放置したのでは会社としては機能しないため、「辞めさせたい」というのが使用者の本音です。だからといって即日「解雇!」を言い渡したらアウトですね。誤解があるのが解雇予告手当(平均賃金の30日分)を支払うから即日解雇できるというものです。解雇予告手当を支払うからといって解雇が成立するわけではなく、解雇に社会的合理性がないとせっかく解雇予告手当を支払ったのに解雇無効にされることもあります。

 ではどうすればいいのかということで、まずは「退職勧奨」を行いましょう。

退職勧奨とはどのような制度ですか。また注意点を教えてください。
退職勧奨とは、使用者側から労働者に対して退職を促す行為です。退職勧奨であれば、解雇と異なり、
解雇手続き(解雇予告など)は必要なく、解雇権の濫用といった問題にもなりません。つまり、自己都合退職となり、解雇にはならないということです。

 退職勧奨に対して労働者が応じるかどうかは本人の自由な意思に基づくものであるため、辞める意思がない労働者に強引に行ったり、執拗に退職を迫ったりすると退職を強要したことになります。このような場合には、労働者は後から退職の意思を取り消すことができます(民法96条)。

 退職を勧めることになった理由や経緯を丁寧に説明し、最終的には自分の意思で退職する方向に持っていくことができれば、労使ともに解雇という嫌な思いをしなくて済みます。