O社の代表取締役X氏と取締役Y氏(X氏の配偶者)が退任することになりました。X氏は代表取締役を退任後、会長兼取締役として会社に残ります。Y氏は取締役を退任し、会社の経営には一切関与しません。

 X氏、Y氏ともに会社の設立時から勤務し、退任時までの勤続年数は15年です。X氏は設立時から代表取締役でしたので、役員としての勤続年数は15年、一方、Y氏は当初は役員に就任しておらず従業員としての身分であり、取締役に就任したのが退任の4年前です。つまり、Y氏は、従業員としての勤続年数は11年、役員としての勤続年数は4年です。

 株主総会でX氏の退職金を1億5000万円、Y氏の退職金を3000万円(使用人期間分1000万円、役員期間分2000万円)と決議しました。

 今回の事例では退職金に係る源泉所得税の計算がポイントです。

勤続年数5年以下の役員に退職金を支給する場合、源泉所得税の計算の注意点を教えて下さい。
 退職所得の金額は、(退職金-退職所得控除額)×1/2相当額とされていますが、平成25年1月以降、役員等の勤続年数が5年以下の者(特定役員等)に対する退職金のうち、その役員等の勤続年数に対応する部分については、この1/2の特例は適用できません。

 役員等の勤続年数とは、役員等として勤務した期間をもとに算定することとなっており、役員の勤続期間が4年3ヵ月の場合は5年となります(役員勤続期間に1年未満の端数がある場合には、その端数を1年に切り上げます)。このケースでは、特定役員等に該当することになります。

 事例のように、特定役員の退職金と一般の従業員部分の退職金とを合わせて支給する場合、退職所得金額は、次の(イ)と(ロ)の合計額となります。
(イ)特定役員の退職手当等の収入金額 - 特定役員退職所得控除額
(ロ){一般の従業員部分の退職手当等の収入金額 - (退職所得控除額 - 特定役員退職所得控除額)} × 1/2

 例えば、使用人として10年勤務し、その後役員に就任して3年間勤務した後、退職した場合、
①使用人退職金 800万円、役員退職金500万円
②勤続年数:13年(うち役員勤続年数3年・・・・・・特定役員に該当)
③退職所得控除額: 40万円×13年=520万円
④特定役員退職所得控除額: 40万円×3年=120万円 
⑤退職所得金額: (500万円-120万円)+{800万円-(520万円-120万円)}×1/2 = 580万円
 このケースでの退職所得金額は580万円になります。

 役員が退任し退職金を支給する場合、役員としての勤続年数が5年超となってから退任した方が所得税、住民税の負担は軽減できます。

退職金を支給する場合の個人住民税の手続を教えて下さい。
 退職金から徴収した個人住民税は、退職日の属する年の1月1日現在の住所地の市区町村に、徴収した月の翌月10日までに、月々の給与から徴収した給与所得にかかる特別徴収税額とあわせて納付します。

 その際、「市民税・県民税納入申告書」に退職手当等の支払金額および特別徴収税額の内訳等を記入し、あわせて「退職手当等に係る市民税・県民税特別徴収税額納入内訳書」を提出します。

 また、退職手当等の受給者が法人の取締役、監査役、理事、監事等の役員または相談役もしくは顧問である場合は、「退職所得の特別徴収票」を退職後1ヵ月以内に市区町村に提出しなければなりません。