【労働保険】出向者の労災保険、雇用保険の申告、納付

2016年05月14日

労務相談事例

 労働保険の年度更新が近づいています。この時期になると相談件数が増えるのが、出向者に係る労働保険の申告・納付についてです。

 出向者の場合、元の会社に在籍したままで別の会社に出向し勤務します。賃金は、通常は出向元法人が出向者に支払い、出向先法人は出向元法人に給与負担金として支払います。

 出向者への賃金が出向元法人から支払われますが、出向先の仕事に従事しているため、労働保険の年度更新で出向元法人側に含めて申告するのか、出向先法人側に含めて申告するのか迷うことがあります。

労災保険では、出向者はどのように取り扱うことになりますか
 出向者は出向先の事業主の指揮監督を受けますので、たとえ、その出向者が出向元法人から賃金の支払いを受けている場合であっても、労災保険においては、出向先の労災保険の適用を受けることになります。

 出向者の労災保険の関係は出向先との間で成立するため、出向者の労災保険に係る保険料の負担および納付義務を出向先法人が負います。

 出向者の賃金について、出向先法人がすべて支払う場合には、それを労災保険に係る賃金総額に含めて労働保険料を算出します。出向者の賃金の全部または一部が出向元法人から支払われている場合には、出向先法人は出向元法人が負担する賃金と出向先法人が負担する賃金とを合算した賃金額を労災保険に係る賃金総額に含めて申告します。

雇用保険では、出向者はどのように取り扱うことになりますか
 雇用保険については、出向者は出向元法人と出向先法人との間で同時に2以上の雇用関係にある労働者に
該当するため、原則として、その者が生計を維持するために必要な主たる賃金の支払いを受けている方の雇用関係についてのみ被保険者となります。

 たとえば出向者の賃金を出向元法人が3割、出向先法人が7割負担している場合は、主たる賃金を受ける雇用関係は出向先法人との間にあることになります。

ただし、出向先法人の被保険者となることで出向元法人の被保険者であった場合に比べて著しく差異が生じる場合、労働者にいずれの会社で被保険者となるかを選択させることができます。

 また、労災保険と異なり、出向元と出向先の賃金の合算はありません。

出向者が出向先で役員となる場合はどうなりますか
 出向者が出向先法人で役員となる場合、使用人兼務役員に該当する場合を除き、出向先では雇用保険の被保険者となることはできません。

 また、役員の場合は、中小事業主等の特別加入をする場合を除き、出向先法人で労災保険の適用を受けることはできません。